スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【感動する物語】

【二度目の人生】

「僕は今、二回目なんだ」僕は、酒の勢いで女に自分の秘密を打ち明けた。

「どういうこと?」女は興味深そうに聞き返してきた。その面白がった表情が鼻につ
いた。

「僕は、一度生きた。でも、気が付いたらそこは1997年だった。信じないかもしれないけど、僕の人生は今二回目なんだ」今までに、このことを人に話したことはない。笑い飛ばされるか、金儲けの道具にされるのが目に見えていたから。

 深夜のバーで女は声をひそめて言った。「じゃあ明日は何が起きるのかしら?私にだけ教えて」誰も信じやしないのに。

「明日は大規模な銀行強盗が起きた日だ。都市銀で立てこもりが起こった一時間後、また別の都市銀が狙われる。捜査体制が整わないうちに犯人グループはとんずらさ」僕にとっては過去の話。彼女にとっては未来の話。

「それは大変ね。で、あなたはどうするの?」

「僕は何もしない。いつでも僕は何もしなかった。今までもこれからもね」面白がるような口調だったかもしれない。

「そう。でもあなたの奥さんはその銀行の行員なんでしょ?」女は初めてこっちをちゃんと見て言った。僕とちがって面白がるような調子はまるでない。

 なぜ、この女はそのことを知っているんだ。確かに、僕の妻は最初の犯行が起きた銀行の行員だった。でもそれは一度目の人生の話だ。二度目の人生では妻と出会わなかった。いや、僕が意識的に避けたという方が正しい。

 もう一度失うのは耐えられなかったから。妻は犯人に逃亡の際、射殺された……

「どうするのかは、あなたの自由よ。よく考えてね」
 女は僕があっけに取られているうちに店を出ていってしまった。追いかけたが、もう店の外に姿はなかった。

 もしかすると、彼女も二度目の人生を送っているのかもしれない。だから、僕にアドバイスをくれたのか。いくら考えても答えは分からなかった。

 それよりも考えなければいけないことがあった。明日、僕はどうするのか……



 女の言葉がひっかかって僕は銀行に来てしまった。妻の勤めていた、いや勤めている銀行だ。記憶に残っている犯行時刻の二十分前に行内に入った。妻を連れ出すためだ。

 理由はなんでもよかった。誘拐騒動になっても構わない。彼女を死なせたくない。

 だが、なぜか妻の姿は見当たらなかった。窓口業務を行っているはずなのに。もしかすると、彼女は銀行に勤めていないのかもしれない。僕に出会わなかったから少し人生が変わった、そう考えても違和感はない。

「全員、伏せろ!」野太い男の声が響き渡った。続く発砲音。手に持った拳銃で天井に威嚇射撃をしたようだった。

 なんてついてないんだろう。妻を助けるはずが自分が巻き込まれてしまった。

 それから、犯人の立てこもりが始まった。しかし、二時間たてば解放されることが
分かっている僕は静かに犯人の言うことに従った。

 やがて、もう一方の銀行強盗が成功したことを仲間から知らされると、犯人は連れ出す人質を選び始めた。一度目の人生では妻が選ばれた。しかし、妻はいない。僕は安心しきっていた。

「お前だ、来い」一人の女性行員が選ばれた。彼女の顔を見て、僕は愕然とした。

 昨日の女だった。

 犯人の方に向かって歩きながら女は言った。
「来てくれて、うれしかった」彼女は涙を流しながら、確かに僕に向かってそう言った。

「顔は整形したの」彼女は銃口を突きつけられながら叫んだ。やっと僕は理解できた。彼女こそ僕の妻なのだ。

 妻は僕に向かって叫び続けた。

「私は三度目なの。でも運命は変えられない。私は今日で死ぬ。だから、逃げなかったの。でも、あなたが来てくれてうれしかった。あなたがいつまで生きるのか知らないけど、また次の人生で…」妻は言い終える前に射殺された。

 僕は犯人に向かって駆け出していた。僕の記憶が途切れるのが今日だ。妻ともう一度出会える日はそう遠くないらしい。
スポンサーサイト
コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

hayato

Author:hayato
那須塩原市で防災・防犯の会社を経営しております。安心・安全・信頼を通して地域のお役に立てる会社にしようと奮闘中です。少しでも皆様のお役に立てる情報が流せたらと考えております。

カテゴリー
ブログ内検索
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。